日本人なら知らない人はいないであろう日本一高い山富士山。その標高は他の山の追随を許さず、その端正な風貌から日本の象徴として古来より人々の信仰を集め、畏敬、登拝されてきた。
これはそんな日本一の山の富士山に、無謀にも海からすべて人力で登ってやろうという有志達の物語である。
夏休み期間中の8/17~19の三日間を使い、二泊三日の富士ランを開催しました。
参加者
14堀江さん
15藤田(プランナー)高松 大山 佐々木 田村
17松野平 南 酒向
一日目
松本駅→富士駅→太平洋→新富士オートキャンプ場
二日目
新富士オートキャンプ場→富士宮五合目→御来光山荘
三日目
御来光山荘→富士山頂→富士宮五合目→富士宮駅(解散)
一日目
電車の時間が8時半なので少し余裕を見て生協前に7時半集合。
集合写真を撮ったら松本駅に向けて出発。
全員ほぼ時間通りに集合してくれて助かりました。
松本駅に着いたら駅前のマックで朝食を済ませ、食べ終わった者から輪行準備に取り掛かる。
この日が初めての輪行という一年生がおり、少し心配だったが特に問題なく全員予定通りの電車に乗ることができた。
松本から途中甲府で乗り換え、富士に電車で向かうこと約五時間。午後二時前に富士駅に到着。各自自転車を組み立てていると僕の自転車のパーツが一つ足りないことに気づく。どうやらハンドルを固定するボルトが輪行袋内で脱落し、甲府で電車の乗り換えの移動をする際に輪行袋の穴から落ちてしまっていたらしい。悔やむも時すでに遅し。ボルトはホームセンターで調達することとし、ハンドルがガタガタのまままずは昼食を摂るべく、静岡県名物レストランさわやかに向かう。
さわやかは平日だというのに相変わらずの混み具合。席に着くまで15分ほど待たされたが、そこで食した名物げんこつハンバーグは筆舌に尽くしがたいほどにうまかった。時刻はすでに三時半を過ぎており、空腹が頂点を迎えた男たちが無心に目の前の肉をほおばっていた。
さわやかで腹を満たした一行は今回のランの真のスタート地点となる海に向かう。
海岸に到着し、海を見た我々は水を得た魚のごとく、チャリを乗り捨て水着に着替えると一目散に海へと駆けていった。
三十分ほど海で遊んだあと、いよいよここ(標高0メートル)から3776メートルの富士山の頂を目指す富士ランが始まる。
この日、富士山は雲がかかっており、その姿を拝むことはできなかったが、一瞬頂上部分の雲が切れて頂上だけが姿を現した時は「あそこまで登るのか」とその高さに身震いがした。
市街地を抜け、まずは買い出しをすべくマックスバリュ万野原店へと向かう。途中、ホームセンターに寄る組(僕)とチャリ屋に寄りたいという組がいたので途中から別行動とした。
スーパーまでの坂が地味にきつかったがなんとか全員スーパーに到着。ここで夕食、翌日の朝食、昼食、夕食、翌々日の朝食と補給食の買い出し。すでに日は沈んでおり、到着時間が遅くなってはキャンプ場の管理人さんに迷惑なのであれこれ考える暇もなく急ぎ足で各自買い出しを済ませる。
買い出し後、標高約500メートルにある新富士オートキャンプ場に向けてヒルクライム開始。
スーパーを過ぎるとすぐに街灯はなくなり、真っ暗な樹海の中をひたすら登る。頼れる明かりはか弱い自転車のライトと時折通る車のライトのみ。三日分の食料を積んだ自転車で先の見えない闇の中でのヒルクライムはめっちゃきつかったが、キャンプ場には温泉があると事前に調べていたのでこの先に温泉が待っているならと思うと頑張れた。
八時過ぎ、全員キャンプ場に到着。そしてこのキャンプ場(の管理人のおばちゃん)が最高に良かった。(主観です)
汗だくになりながら自転車で登ってきた我々を見るやいなや料金を負けてくれ、シャワー(結局その日は湯船にお湯をはっていないらしく、温泉には入れなかった)を浴びる際にはバスタオルやタオルやシャンプーを無償で貸し出してくれ、さらには風呂上りにスイカを差し入れてくれた。テントは持ってきていないのでバンガローを借りたのだが、十人用を八人で使えたので広々と過ごすことができた。まさに最高のキャンプ場だった(主観です)。
各自夕食を済ませ、明日の予定を立てて早めに就寝。
二日目
六時ごろに起床。各自朝食、準備を済ませ八時ごろにキャンプ場を出発。
この日は自転車で標高2400メートルの富士山五合目まで自転車で上がり、そこから登山装備に切り替えて2780メートルに位置する御来光山荘を目指す。その標高差実に2300メートル。今日が正念場だと全員気合を入れる。
二班に分かれ、五合目までひたすらフリー区間とした。
元気な17が先行し、体力の衰えた上回は頻繁に休憩しながらゆるゆると登った。
途中、1合目、2合目と合数と標高が書かれた看板が登場し、それを目安にじわりじわりと標高を稼いでいく。
「ゆうて渋峠くらい」
そんなことを言っていた時期が僕にもありました・・・。
しかし今回は渋峠を登った時とは訳が違った。
登れども登れども終わらない坂道。変化しない景色。時々ぽつぽつと降ってくる雨。かかり始める霧。削られゆく体力。なによりめちゃくちゃ重い自転車。
まったく面白みもない道を延々と登っていくうちに「早く終われ」以外の感情を失っていた。
本格的に雨が降ってきてメンタルが崩壊しそうになったころにようやく五合目に到着。頭から滴り落ちる雨粒は涙の味がしました。
17は上回が到着する30分くらい前に着いていたらしい。寒い中長時間待たせてしまいごめんなさい。17の強さを実感した。
ここでバスで来る(ふぁっく)15田村と合流。昼食は各自とし、寒さに震えながらレストハウスの軒下でお湯を沸かす者、下の階のレストランで暖を取りながらご飯を食べる者、各々自由に昼食を摂った。
昼食後、登山の準備をしていると雨が止んだので集合写真を撮り、二班に分かれていざ登山開始。
歩き始めるとすぐに雲が切れはじめ、晴れ間が見えだした。
すると眼下に雲海が!
それまでずっと雲に包まれていたので晴れ間が覗き、雲海が現れたときは声を上げて感動した。カメラを構え、シャッターを切るチャリ部員の瞳はさっきまでの疲れ切った目はどこにもなく、子供の瞳のように輝いていた(気がする)。
歩き始めて20分後、あっという間に六合目に到着。しばしの間絶景を楽しんだ。
六合目から今日の宿泊地御来光山荘までは1時間少々。六合目を過ぎた途端、写真やテレビでよく見る富士登山の光景が広がり、「富士山来たなー」と富士山に来たという実感がここに来てようやく湧いた。
六合目からもうすでに山小屋が見えていたので楽勝だと思いつつ、背後に広がる雲海に時折目を奪われながらゆっくりと味わいながら登る。
三時半過ぎ、御来光山荘に到着。チェックインを済ませ、各自寝床を確保して食料をもって小屋の脇にあるスペースで早めの夕食。
雲海を眺めながらの肉とビールはまさに優勝そのものだった。
「素晴らしい!」
その一言に尽きるような景色だった。
こんなに心行くまで雲海を堪能できる機会はそうそうあるもんじゃない。「つらかったけど来て本当に良かった」と心からそう思えた。
夕食後、徐々に暮れ行く空にカメラを構える者、物思いにふける者、早くも就寝準備を整える者、それぞれがこの天空での贅沢な時間を思い思いに過ごしていた。
日が沈むころに就寝。二日目が終了。
三日目
翌日、山頂でご来光を拝むため深夜1時に起床。眠い目をこすりながら外に出ると八月とは思えない寒さだった。
ヘッドランプを装備し、真っ暗闇の中いよいよ山頂に向けて登山開始。
止まると寒いのであまり休憩はせずに山頂までひたすら登る。
道中、眼下に見える富士市と富士宮市の夜景がきれいだった。
山頂が近くなると人が多くなり、上も下もヘッドランプをつけた人で光の道ができていた。
そして山頂間近で渋滞が発生。頂上の鳥居はもう見えているのに全然進めないもどかしさと日の出に間に合わないかもという焦りがあったが、どうしようもないのでただ待つしかなかった。
しかし、いざ頂上に着くとあたりは霧
結局ご来光は見えずじまいでした。
しかも風が強くてむっちゃ寒い!
たまらず頂上小屋に逃げ込み、晴れるまで待機とした。
たまに晴れる時があるも・・・。
すぐに雲の中。
きりがないので諦めて山頂に向かう。
山頂は写真撮影を待つ人で行列ができていた。もはや観光地ですね。
そしてようやく順番が回ってきて記念撮影!
これにて富士山0メートルからの登頂達成!
一番の心配は高山病でしたが、誰も発症することなく無事に全員で富士山の山頂に立つことができました!
記念撮影をしたらあとはひたすら下るだけ。あたりを見渡しても霧で景色なんて何も見えないので余韻に浸ることもなくひたすら下る。
すると八合目まで下りてくると山頂の雲が噓のように晴れ渡っていた。
五合目まであっという間に下り、昼前に自転車のもとに帰還。
ここでバスで帰る15田村と別れ、富士宮に向けて標高差2300メートルの長いダウンヒル。過去最高に長いダウンヒルはまさに爽快であった。
5時間かけて登った道をたった1時間で下り切り、富士宮市街に降り立つと富士宮焼きそばを食しに行った。
完食後、浅間大社で集合写真を撮り解散。自走で甲府まで行く者、富士宮駅で輪行する者、それぞれ帰路に着いた。
―振り返ってみて
全員で山頂に立つことができて本当に良かった。ご来光と山頂からの景色を見ることができなかったのは残念だったが、個人的には非常に満足なランだった。キャンプ場で過ごした夜、つらかった坂道、素晴らしい雲海を眺めながらの夕飯、真っ暗闇の夜の登山、富士宮で食べた富士宮焼きそばの味・・・。どれも最高の夏の思い出になった。そして何より海抜0メートルから日本一高い場所まですべて自力で登ることができたこと。これは参加者のみなさんにも大きな自信になったんじゃないでしょうか。得て感じたものはそれぞれでしょうが、このランが何かに挑戦する際の「きっかけ」になれば幸いです。
参加者の皆さん、お疲れ様でした。
文:藤田 写真:藤田・堀江・高松・佐々木